タイピング検定の合格基準から見る子ども(小学生)が目指したい、習得すべきタイピング速度とは

教育現場でICTの活用が推進されていることもあり、タイピングは学校で授業を受ける上で欠かせないスキルになってきています。文部科学省は「国語科目において、文章作成ソフトで文章を書くこと」や「外国語科目においてライティング機能を利用すること」などを挙げていますが、いずれも円滑な学習にはタイピングスキルが必要だと分かるでしょう。

タイピングによる文章の入力が遅い、周囲に追いつかないという状況は、学習への意欲そのものをなくしてしまう要因にもなります。このような状況に対応するため、小学生のうちからスキルとして「タッチタイピング(ブラインドタッチ)」を身につけておくことは大切といえます。

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タッチタイピング(ブラインドタッチ)とは

タッチタイピングは、手元を見ずにキーボードで文章を打つテクニックをいいます。タッチタイピングを習得することで、タイピングの速度が上がる(タイプミスにすぐ気が付ける)、文章作成に集中できる、画面に目線を固定でき目の疲労が軽減される、といったメリットがあります。そのため、ローマ字を学ぶタイミングに合わせて、タイピング練習を始めることがおすすめです。

練習する上で、どの程度タッチタイピングを身につけておけばよいか(1分間に何文字打てるようになるべきか)についての基準値を知っておく必要があるでしょう。平成20年(2009年)に示された学習指導要領の中で小学生の入力速度の目標は「10分間に200文字程度」という記述がありましたが、今の子どものインターネット使用率や使用時間を考えれば、時代にマッチした基準とは言えません。ここからは、日本国内で行われているタイピング検定の合格基準を参考に、学年(年齢)毎にどの程度の入力速度を目指すべきかについて考えます。

タイピングの入力速度を測る基準と種類(英語の場合)

タイピングの入力速度を測る基準には種類があります。英語の場合は「KPM(1分あたりの入力文字数)」と「WPM(1分あたりの入力単語数)」に分かれます。例えば「① He is playing the guitar」と「② This company is recruiting employees」はどちらも同じ5単語ですが、入力するキーの数は、①は19、②は32と大きく異なります。そのため「WPM」は、入力キー5つ(スペースやカンマ、ピリオドも含む)で1単語と計算、単語の字数に左右されないように調整されています。

アメリカ国内のタイピング測度の平均は「41WPM」ですが、KPMに換算すると「205KPM/10分間で2,050文字」です。タイピング検定で同等の基準を採用している「文章入力スピード認定試験(英語部門)」の合格基準を照らし合わせた場合、1級合格に相当します。

タイピングの入力速度を測る基準と種類(日本語の場合)

タイピング検定で採用されている基準は「入力済み漢字と仮名の文字数」で計算する方法です。例えば「私は愛媛県出身です」という文章の場合、文字数は9とカウントされます。これを採用している検定は、ビジネスキーボード(日本商工会議所)、日本語ワープロ検定(日本情報処理検定協会)、パソコン検定タイピング試験(全日本情報学習振興協会)が挙げられます。

全ての試験で共通していることは、「入力済み漢字と仮名の文字数」が1分間で80文字を超えるラインに上位の級(認定)が設定されているということです。また、パソコン検定タイピング試験については、かなり正確な入力も求められるようになっており、同じ1分間に80文字以上の基準でも、98%以上の正確さが必要です。

上述した4つの試験について「1分間の文字入力レベルと文字数」で比較表を作成しました。表の色分けは、赤は100文字以上(タイピングが速いとされるレベル)、青は80文字以上(オフィスワークが問題なくこなせるレベル)、緑は40文字以上(手書きと同程度のレベル)、黄は20文字以上(基本操作ができるレベル)にて行なっています。

タイピング検定のレベル比較表

子ども(小学生)が目指したいタイピング速度の基準

これまでタイピング検定の級(認定)の基準から入力速度で一般的に設定されている目標ラインを整理しました。これらを踏まえて、子ども(小学生)のうちから「1分間に80文字程度」が打てるようになることを目標に練習することが望ましいと考えることができます。ローマ字を学ぶタイミングから少しずつ練習を始め、小学生中学年(3-4年生)で「1分間に40文字程度」を目指します。その後、タッチタイピングの習得と共に「1分間に80文字程度」を目指すという流れ(目標)が良いでしょう。

IMEの予測変換を非表示にする方法【Windows10】テックタイピング利用にあたって必須の設定

テックタイピングは、普段と同じ環境でタイピングに取り組んでもらいたいため、タイピング練習のツールとしては珍しく、打ち間違えた文字を「backspace」で消す、文字の入力が完了したら「enter」で確定させる必要があるようになっています。そのため、IMEの予測変換が出てこないように設定をした上で使用することをおすすめしており、設定は下記の手順で行います。

予測変換候補を非表示にする操作手順

タスクバーに表示されているIMEアイコン(「A」または「あ」)を右クリックして、表示された一覧から「設定(S)」をクリックします。Microsoft IME 画面から「全般」をクリック、「予測入力」をオフにします。

IMEの予測変換を非表示にする方法

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子ども(小学生・中学生)のタイピング練習とタッチタイピングに関する最新教育情報

2020年の学習指導要領の改定により、情報教育への取組みが本格的に始まったこと、子ども(幼児、小学生、中学生、高校生)向けのプログラミング教室が普及(プログラミング教育の必修化も背景)したこともあり、タイピングに着目されることが増えました。
パソコンやアプリケーションなどのツールを使いこなす上で必要になるのが「タイピング」であり、画面を見ずにキーボードを打つ「タッチタイピング」を身につけた場合、身につけていない人に比べて2倍のスピードで作業をこなせると言われています。本記事では、子ども(特に義務教育段階)のタイピングに関する情報やデータを分かりやすく簡潔にまとめます。(最終更新:2月3日)

平成20年の学習指導要領で示されたタイピング速度の目標

文部科学省が2015年10月から2016年1月にかけて、情報活用能力調査を実施しました。児童生徒の情報活用の実態について、情報通信技術を活用した調査を実施・把握・分析するとともに、児童生徒の情報活用能力育成のための関係施策の改善・充実を図ることが目的でした。

この調査の中で、文字入力問題(キータイピング)について、小学5年生の児童116校3,343名と中学2年生104校3,338名に対して標本調査が行われました、調査の結果、文字入力速度(キータイピング)は、1分間での入力の平均速度が小学5年生で5.9文字、濁音・半濁音や小文字の入力、アルファベットやカタカナの入力切り替えに課題があるという結果が出ました。5.9文字と聞くとイメージが湧きにくいですが、原稿用紙1枚の文字数は400字、原稿用紙1枚の文章を作るのに約67.7分(約1時間)必要だということです。

タイピングでの文字入力速度については、文部科学省が平成20年(2009年)で示した学習指導要領、教育の情報化が発展することを目的として定めた「児童生徒に身に付けさせたい情報処理能力」の中で、小学生は「10分間に200文字(1分間に20文字)程度の文字が入力できる」を目標に設定していましたが、2015年の段階で全く目標に届いていませんでした。

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タイピングの速さが目標に届かなかった背景と現況

2015年時点の目標と実際に乖離があった要因に挙げられるのは、公立小中学校におけるパソコンの整備状況です。文部科学省の「学校における教育の情報化の実態等に関する調査報告」によれば、2014年段階で小学校ではパソコンが児童1人あたり6.5台しか配備がされておらず、児童生徒1人当たり1台の配備には程遠い結果でした。

しかし、現在では解消されており、2021年3月段階で児童1人あたり、1.4台まで急速に普及が進められています。ここまで整備が進んだ背景は、2019年11月の経済財政諮問会議で安倍晋三首相(当時)が示した「教育現場でパソコンが1人1台普及するのは当然」の発言により、急速に議論が加速したためです。2019年12月には文部科学省が「GIGAスクール構想」を打ち出し、その中で「児童生徒1人につき1台の端末を配備」が明確に設定されました。当時、5か年の計画で立てられた構想でしたが、新型コロナウイルスの緊急事態宣言の発出を受けて、早期実現のための支援を国が積極的に行ったため5か年より早く整備が進められました。

タイピングの速さの最新データ

子ども(小学生・中学生)の最新のタイピング速度に関するデータは、2022年に教育ネットとミラボが実施した「第一回全国統一タイピングスキル調査」が参考になります。この調査は、両社が共同開発したタイピング練習ソフト「らっこたん」を使って計測、日本全国から申込みがあった児童生徒6,813名が参加しました。結果は1分間に49.2文字、2015年のタイピング入力速度の約8倍でした。国が実施した調査ではなく、民間企業の募集に申込みをした児童の結果であることから、国が調査をし場合の入力速度は少し下がるのでは、と言われています。

文部科学省の発表によれば、GIGAスクール構想で配備された端末は、Chromebook(43.8%)、iPad(28.2%)、Windows(28.1%)となっており、タブレットよりパソコンの方が多い(タブレットの場合でも入力用のキーボードが付属している場合が多い)ことから、使用の過程でタイピングをする機会が増えたことも背景にあると推測できます。

学校現場でのタイピング練習の現状

タイピングについて、現行の学習指導要領には「児童がコンピュータで文字を入力するなどの学習の基盤として必要となる情報手段の基本的な操作を習得するための学習活動を計画的に実施すること」と定められており、実際に学校現場でタイピング練習が行われています。

学校現場での事例

秦野市立鶴巻小学校(神奈川県)では、「プレイグラムタイピング」が活用されています。パソコンを調べ学習や話合い学習などに活用していくには「タイピングが必須になる」という学校長の考えのもと、小学校低学年からタイピング練習が行われます。その結果、小学3年生で「0.7〜0.9/秒の速さ(1分間に42〜54文字)」でタイピングができるようになっています。

町田市立町田第5小学校(東京都)では、「情報活用能力#東京モデル」に基づき、小学2年生からタイピング練習を進めています。「情報活用能力#東京モデル」とは、文部科学省「教育の情報化の手引き」の中にある「情報活用能力の育成」を発達段階を踏まえ、ステップごとに育成したい能力・資質が示されたものです。
小学1年生の時点で起動やログイン・終了などの基本的な操作をマスターした上で、2年生からローマ字表を用いながらローマ字を学習した後、キーボード検定サイト(キーボー島アドベンチャー)を使ってゲーム感覚でタイピング練習をします。

川崎市総合教育センター「GIGAスクール構想における段階的なICT活用」によると、川崎市内の中学校で週1〜2回、朝の10分間、キーボード検定サイト(キーボー島アドベンチャー)でタイピング練習をさせたところ、半年間で1分間に入力できる文字数が10〜15文字増加しました。また、生徒に課題提出の方法を「タイピング」と「手書き」いづれかの選択ができるようにしたところ、1分間に60文字打つことができる生徒はタイピングを選択、ほぼ全ての課題を提出しているのに対し、1分間に30文字以下しか打つことができない生徒は手書きを選択をしている傾向に加え、未提出課題が大きく増えたという調査結果が出ました。
継続によってタイピング速度と精度が上がる、という結果は、文部科学省「StuDX Style」でも報告されています。ある小学校では、朝10分間のタイピング練習を続けたところ、タイピングテストの正答率が64.24%から1ヶ月で90%以上になりました。

タイピングの速さはどこを目標にするべきか

現在、国から目標としての数値は示されていません。平成20年(2009年)に示された学習指導要領の中で小学生の入力速度の目標は「10分間に200文字程度」としていますが、今の時代にマッチしているとは言えません。実際、働く際に最低限必要とされる速度は「1分間に80文字程度」とされているため、その程度を目標とするのがいいと考えられます。

無料のタイピング練習サイト(タイピングゲーム)の多くは商用禁止【プログラミング教室向け注意喚起】

子ども(幼児・小学生・中学生・高校生)向けのプログラミング教室の多くでは、プログラミング学習とは別にタイピング練習を授業で行っている場合が殆どです。タイピング練習を実施する意義や目的は色々ありますが、プログラミング教室の場合では、直感的に扱えるビジュアルプログラミング言語(Scratch等)からテキスト言語に移行して、本格的にコードを書く場合に「速く正確に入力できることは重要」だから、というものでしょう。

無料公開されているタイピング練習サイトの多くは商用利用禁止

各社、様々なタイピング練習サイトを授業に取り入れていますが、商用利用可能なものかどうか確認した方が良いかもしれません。なぜならインターネット上で無料公開されているタイピング練習サイトの多くは、商用利用を禁じているからです。子ども達に著作権の取扱い方など正しいインターネットの使い方を教える立場であるプログラミング教室が「サイトの不正利用をしている」というのは信頼に関わる問題のため対処が必要な場合はタイピング練習の運用方法を見直しましょう。

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タイピング練習サイトの利用規約抜粋

インターネットでの検索件数が多い主要なタイピング練習サイト「寿司打,POPタイピング,Easyタイピング等(Neutral)」,「イータイピング」,「TypingTube」の利用規約を下記に引用しています。また「プレイグラム タイピング」は、よくある質問の中で「利用規約に基づき、無許諾の商用利用は禁止しています」と明記しています。本記事で引用していないサイトも、利用規約を確認して商用利用が禁止されていないか確認をすることをおすすめします。

Neutral利用規約
第6項:営利目的でNeutralのコンテンツを利用することはできません。コンテンツを利用した有料のイベントや講習等を行って利益を得たり、プレイ動画の配信等で視聴者から直接利益を得るような行為は固く禁止します。また、Neutralとは関係のない第三者が、自らの活動の宣伝や広告、営業の為に、Neutralのコンテンツやそのタイトル名、画像、動画等を使用することはできません。

イータイピング利用規約
第3条会員の義務:会員は、本サービスを利用するにあたり、次の行為を行ってはなりません。…(12)本サービスを利用して、営利を目的とした情報提供活動その他営利目的の行為を行う行為。

TypingTube利用規約
許可と制限事項:本サービスを個人的、非営利的な用途以外でコンテンツを視聴するために利用すること(たとえば、不特定または多数の人のために、本サービスの動画を上映したり、音楽をストリーミングしたりすることはできません)

商用利用可否の記載がないタイピング練習サイト

インターネットでの検索件数が多いタイピング練習サイトで「マイタイピング(ひよこタイピング等)」,「タイピング練習道場」については、商用利用を禁じる規約等を確認することができませんでした。これらを使っている会社は、念の為運営者に利用の可否について確認しておくことをおすすめします。当社で調べでは、規約の中で商用利用可と明記しているのは「タイピングランド」のみです。